「ほい完成! 仕上げのリップは自分で塗りなー」



みかちゃんにうながされて、リップを手に取る。

みかちゃんが誕生日にプレゼントしてくれた、ヒロインピンク。



華やかなピンクを、今、ためらいなく唇にのせることができるのは、千隼くんのおかげだ。



みかちゃんの「合格」をもらって、立ち上がる。

ふわっとフリルがたっぷりついたスカートが宙に浮いた。




「こののクラスのカフェ、絶対遊びに行くね、楽しみ」

「うっ、わたしはできれば柱と同化したい……」

「なんでよ! メイド服似合ってるのにさ」




クラス衣装の軍服を華麗に着こなしたみかちゃん(超絶美人)に言われたって、説得力がなさすぎる。



わたしのクラスは、壮絶な論争の果てに “メイド&執事喫茶” をすることになったのだけど、クラスのかわいい女の子たちと並んでメイド服を着るの、はっきり言って地獄だよ。



それに、裾が普段の制服よりも数センチは確実に短くて、すーすーするような……とにかく落ち着かない!



でも、これはもう決定事項だから、諦めるしかないわけで。





「じゃあ、お互い文化祭楽しもーね」




みかちゃんと別れたわたしは、重い足取りで教室へと向かった。