つうか、ごく最近まで……もっと言うと、このかの口から「好き」って言葉を聞くまで、このかは俺のことは好きにならないだろうな、と心のどこかで諦めていた気がする。



せいぜい仮の恋人にこぎつけたのが限界で、いつか、このかに好きな人ができて「もうやめよう」って言われる日が来るのを、ずっと覚悟していた。



ていうか、このかは逢見のことが好きなんじゃないかと思っていたくらいだ。



だって、今まで何回見てきたと思ってんの。

このかが他の男にあっさり恋に落ちるところ、目の前で。



逢見みたいなタイプの男に、このかが弱いのも嫌というほど知っていた。



本当は最初から遠ざけたかったけど、独占欲も束縛も、俺のエゴでこのかのことを困らせるだけだと思っていたから、逢見がこのかとの距離を詰めようとするのも、このかのことをどこかに隠したくなる衝動をこらえながら、我慢してさ。



……結局、逢見の香水がトリガーとなって、最終的に色々爆発させてしまったわけで、その点に関しては未だに反省している。




『……千隼くん』

「うん?」




このかに呼ばれると、無意識に返事する声が甘くなる。

それに気づいたのは、ごく最近のことだ。



他人(=逢見)に指摘されてはじめて気づいた。

あー、なんか、俺、ほんとにベタ惚れなんだな、と思い知らされた。