「……ほんとにわかってんのかよ」
千隼くんがいぶかしげにこぼす。
────わかっていることを、総括すると。
「わたしを、千隼くんの彼女に、してほしい……」
「それ、どっちのセリフだと思ってんの」
「……?」
きょと、首を傾げたわたしの頭を千隼くんがぐりぐりと撫でた。
それから、ふいに思い出したかのように。
「逢見とは何もねえの」
「ない……! ほんとに、なにも……」
「へえ?」
千隼くんが不機嫌に目を細める。
すん、とわたしの匂いを嗅いで、不服そうに息をつくから。
「香水を振りかけられただけ! だよ!」
ことのあらましをかいつまんで説明する。
ひととおり聞き終えた千隼くんは、なぜか険しい顔のままだった。
「ふーん……それでも、無理だけど」
「えっ」
「俺、心狭いから」
こつ、と額をぶつけてくる。
その甘い仕草に、きゅーっと胸が疼いた。



