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「千隼くん……っ!」




ぜえぜえと息を切らしながら、やっとその後ろ姿を見つけた。

1階、渡り廊下の奥、水道のところ。


なんでこんなところにいるんだ、と思いつつ、名前を呼ぶと千隼くんは驚いたように振り向いた。




「このか……?」




振り向いた千隼くんはなぜか髪からぐっしょり濡れていた。




「え、なんで濡れて……」

「頭、冷やしてた」

「……物理的に?」



流れるように突っ込んでしまう。
違う、ええと、そうじゃなくて……。


水に濡れた千隼くんの姿が妙に色っぽくて、ここにたどり着くまでの間に頭のなかでまとめたはずの伝えたい言葉がばらばらに散らばっていく。



だめだ、そもそも、わたし、こういうの向いてないんだった。

頭も要領もよくない。



準備したって結局意味なくて、思いついたことをそのまま言うしかないの。