「な、に言って……」
「抱きしめられた? キスされた? それとも、もっと他のことされた? ……それで、そういう顔、あいつにも見せたの」
勘違いもはなはだしい。
どこからそういう話になったのかわからない。
否定したいのに、千隼くんの指先がわたしの輪郭をなぞるみたいに甘い刺激を送ってくるから、それに耐えるのに精いっぱいで。
それに、千隼くんが近すぎてくらくらする。
「してな……っ、なにも……っ」
必死に首をふるふる振ると、千隼くんが「チッ」と舌打ちした。
「何もなかったら、匂いなんて移んねえんだよ」
「っ、におい、って」
心あたりはないこともない。
わたしが帰ってくるなり、とつぜん千隼くんが豹変した理由ってまさか。
逢見くんにかけられた香水のせい……?
でもこんなになるなんて聞いてない、話が違う。逢見くんの話では、いい匂いだから、千隼くんも好きかもって────。
「ちがっ、これは……っ、ひゃ!」
喋らせてももらえず、余裕をすっかりなくした千隼くんの指先が、するりとブラウスの下からすべりこんでくる。
際どいところにふれられて、変な声を上げてしまって。
すると、千隼くんが苦しげに眉を寄せた。