「え」

「匂いが移るまで、何してた?」




じりじりと距離をつめてくる千隼くん。

思わず後ずさると、あっという間に壁に背中がついて逃げ場がなくなってしまう。



隠しごとをしているわけではないのに、いてもたってもいられなくなって顔を逸らすと、それを許さないとでも言うように顎を掴まれて、真正面を向かされる。




「なあ、どこまで許した?」

「ゆ、ゆるしたって……なにをっ、ぁ」




千隼くんの腕が背中に回る。


背骨をなぞるように指先がつー……と伝って、体がぴくりとふるえた。

知らない感覚にぞわぞわしてすがるように千隼くんを見つめるけれど、止まってくれない。


脇腹から腰あたりをゆるく、ふれられて。




「あいつにどこまで触らせた?」