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「弓木くん、あの、わたし、大丈夫だよ?」

「……なにが?」



ローファーに履き替えて学校を出たあと、弓木くんに連れられるがままに駅前の商店街へ向かっていた。

きょとんとする弓木くんに。




「わたし、確かにそそっかしいかもしれないけどさすがに迷子になったりしないもんっ。だから、手……握っててくれなくても」



ずっと繋がったままの手。

そんなに心配してくれなくても、と思っていたのだけれど、そんなわたしの発言に弓木くんはわずかに眉を動かした。



「まさか、コレ、はぐれ防止だと思ってる?」

「えっ、違うの?」



今度はわたしがきょとんとする番だ。

すると、弓木くんは「はー……」と息をついて、それから呆れたように笑った。




「わかった、いーよ。今のところは “はぐれ防止” で」

「だから、わたし、はぐれないってば!」

「そのわりに、すぐ逃げようとするじゃん?」




うっ、根に持たれてる。
だから、それも、反省してるんだってば。




「中瀬が逃げないように、離してあげない」




きゅ、とわたしの手を握る弓木くんの手の力が強まった。