「……っ、ぁ」
「甘。たしかに美味いな、これ」
「っ、は、はむってした……! 指、食べた!」
柔らかい唇の感触が、指先から離れてくれない。
どうしてくれるんだ。
余裕でキャパオーバーで、生理的な涙がじわっとにじむ。
「あー……悪い、思わず」
「ぜっ、絶対わざとでしょっ!」
ドキドキしすぎて苦しい。
ぜんぶ、千隼くんのせいだ。
責任をとってほしい。
「もう1個もらってもいい?」
「っ、今度は自分で食べて……!」
「食べさせてくんねーの?」
「本日の営業は終了しました……っ!」
「残念」
なんて、少しも悪びれずに言う。
食べ終えた千隼くんが「ごちそうさま」と、何気なく唇を親指で拭う仕草に、指先にふれた感触を思い出してしまったわたしは、もうだめだ。
……なんて罪深い。



