「ん。じゃ、よろしく」
と、丸めこまれてしまい、もう引き下がれない。
ふー……と深呼吸して覚悟を決める。
ううん迷う必要はない、食べさせるだけだもん。
千隼くんの口にクッキーを放りこむだけ、ただそれだけ。
「……っ」
それだけ、なのになんでこんなに緊張するかな。
ぎこちなく震える指先、ドキドキ飛び跳ねる心臓、首から頬まで一気に駆け上がってくる熱。
今、たぶんわたし、顔真っ赤だ。
「どっ、ドウゾ、召しあがれ……」
だめだ、千隼くんの顔が上手く見れない。
ノールックで千隼くんの口のなかにクッキーを入れて、それから指先でとん、と押しこむと。
「!」
ふに、と柔らかいなにかが指先にふれる。
たぶん千隼くんの唇だ、と理解した瞬間、恥ずかしさがぶわっとこみ上げてきて、慌てて指をひっこめようとしたのに。
その瞬間、千隼くんが口を閉じて、逃げ遅れたわたしの指先を食んだ。
はむって。



