「ほら」
あー、と千隼くんが口を開けて待っている。
ちらりとのぞく赤い舌が、やけに色っぽくて困ってしまう。
た、食べさせるって……わたしの手で、直接、ってことだよね?
「い、今っ?」
無言の肯定が返ってくる。
こんな教室のどまんなかで。
誰が見てるともかぎらないのに……!
市松模様のクッキーを手にしたまま、そこから動けず、固まっていると、千隼くんはいじわるく口角を上げた。
「できねえの?」
「……っ、だって」
「俺より経験ほーふなら、この程度余裕だろ」
「も、もちろん余裕だよ!!」
売り言葉に買い言葉で強がってしまった。



