それから、葛藤するように「あ゛ー……」と小さく苦しげに声を漏らしたあと。
「なあ、このかは逢見のこと────……」
「……?」
「……いや、やっぱナシ。今はまだ聞かない」
「えっ? なに、なんのことっ?」
慌てて聞き返しても、「何でもねーよ」って千隼くんはごまかして隠してしまった。
隠されると気になってしまうのに。
ううん、隠しても隠さなくても、千隼くんのことなんでも知りたい。ぜんぶ知りたい。
いつからこんな欲深いこと考えるようになったんだろう。
結局、千隼くんが噤んだ言葉の続きを知ることはできなくて。
「クッキー、食わせてよ」
「うん、いいよ、どうぞ」
袋を千隼くんの方に傾けるけれど。
「そうじゃなくて。このかが食べさせて」
「えっ」



