ていうか、逢見くんそんなにぼんやりしていると。
「ラーメン、伸びちゃうよ」
「ふは、たしかに」
わたしの指摘に素直に従って、ズズッと麺をすすった逢見くん。
伸びてしまう前に、完食したのち。
「ねー、このちゃん」
「……?」
「さっき、俺にできて千隼にできないことって言ってたじゃん。このちゃん的にはなんかあるの」
千隼くんより逢見くんが上回っていること……?
うーん、と頭をひねる。
ひねって、考えて。
「箸の持ち方がきれい、とか?」
逢見くんの箸の持ち方はお手本みたいに綺麗だ。
たしか、千隼くんはもうちょっと癖のある持ち方だった。
シャーペンの持ち方もそう。
なんでも器用にこなすのに、そういう細かいところでちょっと不器用なんだよね、千隼くんって。
「ふは、箸の持ち方ってしょーもな」
「ご、ごめん」
しょーもな、と言いつつなぜか逢見くんは満足げだった。
そして、頬杖をついて、ふわっと微笑む。
それはわたしが見た逢見くん史上、もっとも柔らかな笑顔。
「このちゃんのことむやみに追いかけ回したり、もうしない」
「え、ほんと?」
「うん」
どういう風の吹き回しなのかはわからないけれど、それはすごく助かる。
ほっと肩の荷がおりた気分。
「これからは正攻法でいくから」
「へっ?」
「だから、俺のことももっとちゃんと見てよ」
大事な部分がごっそり抜け落ちた説明じゃあ、なにも伝わってこない。
戸惑うばかりのわたしに、逢見くんは宣戦布告する。
「千隼と同じくらい、俺のことも考えて」