「えっ? なにが……」




ふー……と、逢見くんは息を吐き出した。




「中学のときから、いつも “こう” なんの」

「こう、って」


「何してもあいつと比べられるわけ。勝手に並べられて、比べられて、下位互換なんだってさ、俺は。まー、わかってるけど。どーせ、俺は千隼には何ひとつ勝てないし? ジェネリックって言われるのもまあ納得っていうかー」




デフォルトのうさんくさい笑顔は消えていた。





「だいたいさ、ずるいと思わない? 生まれつき何でも持ってるあいつみたいな恵まれたやつは、いちいち愛想振りまかなくても好かれてさ。二番手とか言われることもなく、ずっと揺るがない一番でさあ。────だから、嫌いなんだよ、ほんと」




チッと舌打ちした逢見くん。


だけど、わかってしまった。



逢見くんは、ほんとうは千隼くんのことが嫌い、とかじゃなくて……いっそ嫌いになれた方が楽なくらい、千隼くんがコンプレックスなんだ。