「あー……」



逢見くんは、呻くように声を絞りだす。

それは、言葉を必死に探しているようにも見えた。


それから、へらりとごまかすような笑みを浮かべて。



「よくあることだから、へーき」

「っ、こんなのよくあっちゃだめだよ。ていうか、濡れたまんまなのもだめ! わたしの使いかけだけど……ね、これ使って」




ポケットから取り出したハンカチを逢見くんに手渡すけれど。

逢見くんは受けとってくれない。



「もー! ちゃんと拭かなきゃ! 今はいいけど、あとで冷えるんだよっ? 風邪ひいて困るのは逢見くんだよっ?」




仕方なく腕を伸ばして、ハンカチで逢見くんの髪をわしゃわしゃと拭う。

勝手にふれて、なにか言われるんじゃないかと思ったけれど、逢見くんはされるがままの人形みたいで。



あんな風に水をかけられるなんて。


ドラマでは見たことがあるけれど、現実でこんなしっかり水を浴びせられているひと、初めて見たな……なんて思っていると。




「……これで、わかったんじゃない?」