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「で、どこ行くか決まった?」



放課後。



「ゆゆゆゆ弓木くん」

「なに?」



じ、と透き通った瞳が見つめてくる。

ほんと、うそみたいにキレーな目。そのど真ん中にわたしが映っているのも、うそみたい。


ていうか、近い……!




「あのっ、ちょっと離れて……っ!」

「こうでもしないと中瀬、逃げちゃうじゃん」

「にっ、逃げたりしないよ!」

「さっき、しれっと帰ろうとしてたのは誰」

「うっ、な、ナンノコトカナー」



苦しまぎれに視線を斜め上にそらす。

あまりに苦しまぎれなごまかし方に弓木くんは「ふっ」と笑った。鼻で笑った。



そりゃあ……わたしが悪いのはわかってるよ。

終礼が終わるなり、弓木くんの目を盗んで、教室のうしろの扉からそろそろーっと帰ろうとしたのは、悪かったって反省してる。



でもでも、だって。
どうすればいいかわからなくなっちゃったの!



デート、なんて言われて、朝から夕方までずっと頭のなか、そのことしか考えられなくて。

頭のすみからすみまで、“弓木くん” と “デート” のワードがぐるぐるぐるぐる……。



考えすぎて、なんだかもう悟りを開きそうだった。教祖になるところだった、危うく。