「ちょっとは弓木くんでも見習ったら? ていうか、よく見れば、俐央って弓木くんに適うところ何もないよね。顔も頭もスペックも弓木くんの次点だし、手が届きやすいから選ばれてるだけじゃん。ジェネリックなんだよ、結局みんなに呆れられておしまいになるんだから!」




シャワーのように浴びせられた言葉に、逢見くんの表情が翳って、こわばる。




「……ナナ、ここ学食だから。落ちついて」




なだめる逢見くんの表情の変化には気づかないまま、女の子はテーブルの上のコップを持ち上げた。


逢見くんが飲んでいた、水の入ったコップ。



え、と息をのんだ瞬間、女の子はなんのためらいもなくそのコップを逢見くんの頭上でひっくり返す。



今度は、なんの比喩でもなく、シャワー (というには激しすぎる水) が逢見くんに降り注いだ。




「万年 二番手のくせに!」




女の子はそれだけ言い捨てて、ぱたぱたと走り去っていく。

それは、まるで、にわか雨。



ぽかんと口を開けたまま、真正面の逢見くんに視線を戻すと、髪から制服の肩までぐっしょり濡れていて、ぽたぽたと水が滴っていた。