「あの、なんでわたしを連れてきたの?」
「言ったじゃん。一緒にごはん食べたいって」
「……逢見くんって、女の子みんなにそんな感じなの?」
「いや? このちゃん限定」
わざとらしく甘さたっぷりの声で逢見くんはそう言うけれど、タチの悪いいやがらせとしか思えないよ。
「どうして、わたしにこだわるの」
「このちゃんが、千隼の特別だから」
「千隼くん?」
首を傾げると、逢見くんは目を細めて笑った。
「このちゃんって、千隼のこと好きでしょ」
「……へ」
それは、あまりにふいうちで。
ズドンと頭の上に雷が落ちてきたくらいの衝撃だった。
そっと胸の奥にしまっていた、鍵をかけた宝箱を強引にこじ開けられたような気がして────何も考えられなくなる。
声をうしなって、固まるわたしに逢見くんは「はは、図星なわけだ」と勝手に納得して、それからいつもの軽い調子とは正反対の冷えきった眼差しをわたしに向ける。
「俺はね、嫌い」
「……え?」



