「あ、ありがとう」



お礼を言う。

これで無事に授業に出れるよ、と胸をなでおろしたわたしとは反対に、千隼くんは険しい顔をして逢見くんと対峙する。


すっと鋭い視線。

ふたりの間にバチッと火花が散ったようにも見えた。




「からかい目的なら近づくな」




低い声で、千隼くんが言う。




「本気なんだ?」

「中途半端にちょっかいかけてくるなら、潰す」

「おー怖。女になんてまるで興味がなかったお前が、そんな風になるとはねー。やっぱ、このちゃん、面白いわ」




薄ら笑いを浮かべる逢見くん。

千隼くんは仏頂面のまま、わたしの腕をぐいと引いた。



「わわっ」



あまりに強引で、前につんのめったわたし。
千隼くんは慌てて足をとめて。

それから、「はー……」とため息をついて、独りごちた。




「悪い、思ったより余裕ない」