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「なー弓木。お前、中瀬と付き合ってるって、あれガチ?」

「いや」

「なーんだ、やっぱデマかよ。つまんねーの」



どうしよう、入れなくなった。


今日は日直当番で、日誌を書き終えて職員室に持って行って、教室に帰ってきたら千隼くんがクラスメイトの山本くんに恋バナを持ちかけられていた。


さすがに自分が話題にのぼっている教室には入りづらい。




「ま、そりゃーそうか。お前レベルになると、女も選び放題だしな。まったく羨ましい話だよ」



扉の小さくひらいた隙間から、山本くんが千隼くんの肩を小突くのが見えた。


盗み聞きをたくらんでいたわけではないけれど、耳をそばだててしまう。


だって、わたしのいないところで誰かと話す千隼くんの姿が新鮮で。

どんなことを言うんだろって気になってしまったの。