「えへ、なんか、安心しちゃって……」



千隼くんがぐっと顔を覗きこんでくる。

まっすぐな瞳に射抜かれると、ぶわっと胸に何かがこみ上げてきて。


ぽたり、目のふちからこぼれ落ちたしずくに、誰より一番びっくりしたのはわたし自身だった。



「あ、あれ……、なんだろっ、おかし……っ、止まんな、い」



ぽろぽろと次から次へとあふれてくる涙は、手の甲でぬぐってもぬぐっても止まらなくて。



「このか」



次第にひっく、ひっく、としゃくり上げはじめたわたしを千隼くんは、そっと腕のなかに引き寄せた。

とん、とん、と心地よいリズムで背中をあやしてくれる。




「気がすむまで泣けば。今日は土偶とか言わないし」

「っ、もう、もう言ってるのとおんなじだからそれは!」

「はは」



涙腺がばかになったみたいだ。


大したことじゃなかったのに。

結局、グーパンはされなかったし、先輩たちにかけられたチクチク言葉なんて、あんなのかすり傷にもならないささくれ程度。


普段のわたしなら、へっちゃらなのに。