「あとさ、勘違いしてるみたいだから、ついでに言っとくけど」
完全に戦意喪失している先輩たちに対して、千隼くんってば容赦ないなあ、なんて思っていると。
「ふぁ……っ?!」
こつ、と鈍い音。
千隼くんがかがんで、わたしのおでこに千隼くんのおでこを軽くぶつけた音。
「ゆ、ゆみきく」
「しー……、ちょっとじっとしてて」
先輩たちが、ごくりと息をのむ気配。
おそらく先輩たちの位置からは、ちょうど、わたしたちがちゅう、しているように見えなくもないのだ。
じっとなんてしてられるか……!
わたわたと暴れてなんとか逃げ回ろうともがくと、千隼くんはくすくす笑って肩を揺らす。
そしてそれから。
「今のでわかったと思うけど」
ちらり、と先輩たちに視線をよこす。
「俺のが、このかにベタ惚れってこと。追いかけてんのはこのかじゃなくて俺の方だし、振り向かせようと必死なんで、とりあえず片思いのジャマだけはしないでもらっていいですか」



