弓木くんはどうやらわたしが好きらしい



「ゆ、弓木くん、私たちは」


わたしひとりと対峙していたときには、あんなにも強そうだったのに。

5人の先輩たちは、思わぬ千隼くんの登場に、うろたえはじめる。



「言い訳はいいから。現行犯だし」

「……っ」



千隼くん……怒ってる?

いや、疑問形じゃない。
これは確実に逆鱗にふれている。


ビリビリと空気のふるえが伝わってくるほど。

先輩たちは千隼くんの鋭い視線に、サーッと青ざめていく。




「お前らのこと誰ひとりとして知らないけど、勝手にすればいいよ。俺のことそんなに崇め奉りたければ、どーぞ。別にいくらでも妄想のおもちゃにしてりゃあ、いいけどさ」



千隼くんがぱ、と手を離すとサイドテール先輩のこぶしは力が抜けたようにだらりと重力で落ちた。


ひっ、と引きつったような悲鳴が短く上がる。


そんな先輩たちの反応など気にも留めず、千隼くんはわたしの頬にするすると指をすべらせた。



「ゆ、弓木くん何して……っ、わふっ」



慌てて後ろを振り向くと、そのまま後頭部を引き寄せられて。

図らずとも千隼くんの胸にダイブしてしまう。