「はあ? あんた何訳わかんないこと────」
「こうあってほしい、こういてほしい、ってそんなの理想の押しつけじゃないですか! 勝手に期待して、勝手に期待はずれって……本物の、生身の千隼くんがそこにはいるのに」
「あんたには私たちの気持ちなんてわかんな」
「わかんないですよっ!!」
ついに言葉尻に重ねてしまった。
なんでこんなにもやもやするの。
頭のなかでもやもや絡まった糸をほぐすように、思ったことをそのまま言葉に変えていく。
「だって、それは千隼くんのことが好きとかじゃなくて……先輩たちは、千隼くんの中身を全然見てない、そう、偶像崇拝ですっ」
ああ、ようやくわかったかもしれない。
わたしがこんなに気に入らないのは、どうしてか。
「先輩たちが、千隼くんのことをモノ扱いしてるのが、いやなんです! もっと……千隼くんのいいところは、もっとほかに」
顔が綺麗とか。
つれないところがいいとか。
そんな上辺をなぞっただけで、千隼くんの全部をわかったような顔をして語られるのが気に食わないんだ。
だって、それなら、わたしの方が。
「わたしの方が、ぜったい、弓木くんのこと見てる! 知ってる!」



