弓木くんはどうやらわたしが好きらしい




「千隼くんのさらさらの黒髪もつるすべお肌も、低い声も、頭がよくてなんでも器用にこなせて…………だけど、性格はわりと難ありでいじわるで、毒舌で、容赦なく正論ふりかざしてくるところも、でもほんとうに傷つくことは絶対に言わないところも、強引だしゴーイングマイウェイだし、だけどほんとうはちゃんとひとのことをよく見てるところも、ポーカーフェイスなふりしてるけど実はよく笑うところも…………あとは、意外とスキンシップ取りたがりのくっつきたがりなところとか!! ぜーんぶ、全部、ひっくるめて好きってことですよね!?」




指折り数えながら、まくし立てたわたしを5人の先輩はぽかーんと口を開けて見つめる。

それから5人そろって「何言ってんのコイツ」という表情に変わり。


先陣をきったのは、サイドテール先輩だった。




「意味わかんないんだけど。こっちは、そんな弓木くんは求めてないわけ。誰のものにもならないまま、神聖な存在でいてほしいの。つーんとつれない無表情で」



そうそう、と他の先輩も同調する。

まるでそうじゃない千隼くんは期待はずれ、みたいな顔をして。


ぷつん、とわたしの中で何かが切れた。

だって、それは……そんなのは。



「先輩たちのそれは “好き” なんかじゃないです……っ!」