「だいたい弓木くんも弓木くんだよ。あの美しい顔で誰とも付き合わない孤高なところが良かったのに」
「ね。そのためにファンクラブ作って抜けがけ禁止協定結んで、見守ってきたのに意味ないじゃん」
「あっさり彼女作って、しかも見る目ないとか、普通にナイよねー」
「みんなの目の保養のためのものだったのにさあ、けっこう幻滅したかも」
息をのむ。
ちょっと待って。
なにそれ……なんだそれ。
「待……ってください」
質問いいですか、とおずおず挙手したわたしに、冷たい視線が降りそそぐ。
ビクビク怯えながら、それでも口をひらかずにはいられなかった。
「先輩たちは、千隼くんのことが好き、なんですよね……?」
「はあ? さっきからずっとそう言ってんじゃん。救いようのない馬鹿なの?」
「その “好き” っていうのは」
千隼くんのことを頭に思い浮かべる。
まぶたをきゅっとおろすと、その姿はくっきりクリアに像を結んだ。



