弓木くんはどうやらわたしが好きらしい



「こんな女のどこがいいの」

「平々凡々のどこにでもいそうな普通の女じゃん」

「顔もかわいくないし、頭も悪そうだし、ドジでまぬけっぽくて、全然弓木くんにつりあってない」

「身の程知らず」



ほんとうは、ここで怒ってもいいのかもしれない。

なんてこと言うんだ、って反論したっていいのかもしれない。


でも先輩たちのお言葉のどれにも「そうだよね」と思えてしまった。

だってわたしもそう思う。



知ってるよ。



千隼くんとわたしは、月とすっぽん。
……どころじゃなく、月とミトコンドリアくらいは。


わたしがもろい縄文土器なら、千隼くんはつやつやの伊万里焼。




「あんたみたいなしょーもない女が弓木くんのそばにいるのが許せないの!」

「私たちの方がずっと前から弓木くんのことを知ってるし、追いかけてるし、好きなんだから!」




凄い形相でわたしを睨みつけてくる先輩たち。

般若みたいで怖い、すごく怖い……けれど、その分、このひとたちは千隼くんに本気なのが伝わってくる。



サイドテール先輩も、ハーフアップ先輩も、巻きおろし先輩も、ボブカチューシャ先輩も、玉ねぎリボン先輩も。


このひとたち、みんな、千隼くんのことが好きなんだ。