𓐍
𓏸

SIDE/ 弓木千隼



────ゴツン。



「……痛」



鈍い衝撃が頭に走って、顔をゆがめる。
どうやらヘッドボードに頭をぶつけたらしい。


おかげで少しだけ冷静になれた。


すー……と息を深く吸いこんで、はー……とお腹の底から吐き出す。



「……」



爆発するかと思った。
いろいろ。


原因なんてひとつしか考えられない。

俺をここまで狂わせられるのは。




『…………ちはやくん』



目の前ですーすーと規則正しい寝息をたてている中瀬しかいない。


さっきまで頬を真っ赤に上気させておろおろしていたくせに、今はすっかり大人しく目を閉じている。



睫毛、長い。

桜色のちいさな唇は、少しだけ無防備に開いている。



てか、寝顔までかわいいとか、何なの、聞いてない。

反則じゃねーの。