すると、
「おい、何してるんだ?」
自販機の横に止めてあった車からスーツを着た男が剛に声をかける。
「戦争でこんなだが、ここは家の土地だ。そのジュースも、金も。置いて行け!」
言い終わるが速いか否かその男は地面に倒れていた。
「うるさいんだよ!」
剛が、回し蹴りを決めた。ダンスで鍛えた身体は優に180近くある男の頭をヒットさせるのに苦はなかったようだ。
それだけでも驚きなのに、剛は倒れた男の体をまさぐり、財布と、車の鍵を抜き取った。
その後当然のように車に乗り込み、私とカズに向かって言った。
「乗れ。」
私とカズは笑ってたと思う。
不思議だった。
久し振りにわくわくした。
ダンスするように宙に浮いて蹴りを決めた剛に。
当たり前のように車に乗り込む剛を見て悪いことなのに嬉しく思っている自分を。
可笑しかった。
助手席に飛び乗ると剛が笑った。
「行くぞ!」
「おー!」
カズと私は拳を突き上げ、賛同した。
何処へ続くかわからない道を。
何が待っているか解らない未来を。

私は今、生きている。
唯それだけで幸せだってこと。
花の〜♪
音痴なカズの歌に合わせて私も歌う。
剛は呆れて、でも笑った。
この日を私は忘れない。
辛くても何があってもどこに焦点を当てるかは自分次第だ。
いつか必ず闇は明けるし、
いつか花は咲く。

そう信じて生きてみようって感じた。
この時代の中で。