カズはもう何があっても剛の味方だし、剛もそんなカズに多少は心を許しているようにも見える。確かにあの顔で笑われたらこっちまで笑顔になってしまう。
少しづつ打ち解けてきた私達だったが、戦争という大きな傷跡をつけられた心は暗く、重く、一日一日を生きるのに精一杯だった。
何でもないことがきっかけで、人の心は壊れ、破滅へと向かう…そんなことが日々起こっている中で生活する大変さを身を持って教えられた。
ある日…
支給された野菜とお米のお粥のような物を私は施設の剥き出しのコンクリートの階段の上で貪るように食べていた。
カズも地べたに座り、欠けたスプーンで必死にすくって食べていた。
剛は…
一口も食べていなかった。
「食べないの?」私は何気無く聞いた。食べ物が支給されるのは珍しく、食べておかないと次いつ何を食べれるかわからない状況なのに…
剛は貪るように食べていた私とカズをちらりと見るとお皿を持って、入り口付近で泣いている子供にそのお皿を手渡した。
するとその母親らしき人がいいんですか、と剛に聞き、剛は何も言わずにこっちへ歩いてきた。
「偽善者。」
私は剛に言った。自分でいっぱいなのに他人に今食物をあげる行為がどれだけ生命に関わるか、この人はまだわかってないのだろうか。
「いいんだよ。俺なんて。いつ死んでも構わない」
やるせなさそうにうつむいた剛にカズが必死に言う。
「そんなこと言うなよ!ボクの半分あげるからさ。剛も食べてよ!」
カズの一言は剛も生きてよ、と言ってるような気がした。
「いらない。カズが食べなよ」
力なくそう言うと剛は以前足蹴した自販機に向かって歩き出した。
私とカズは顔を見合わせる。
ガコガコと自販機を壊し始め、中からジュースを取り出す。
そして、お金も。
「剛…」
今子供に食物をあげた剛からは想像できない姿だった。あまりにも暴力的でそんな一面があることに私はぞっとする。
少しづつ打ち解けてきた私達だったが、戦争という大きな傷跡をつけられた心は暗く、重く、一日一日を生きるのに精一杯だった。
何でもないことがきっかけで、人の心は壊れ、破滅へと向かう…そんなことが日々起こっている中で生活する大変さを身を持って教えられた。
ある日…
支給された野菜とお米のお粥のような物を私は施設の剥き出しのコンクリートの階段の上で貪るように食べていた。
カズも地べたに座り、欠けたスプーンで必死にすくって食べていた。
剛は…
一口も食べていなかった。
「食べないの?」私は何気無く聞いた。食べ物が支給されるのは珍しく、食べておかないと次いつ何を食べれるかわからない状況なのに…
剛は貪るように食べていた私とカズをちらりと見るとお皿を持って、入り口付近で泣いている子供にそのお皿を手渡した。
するとその母親らしき人がいいんですか、と剛に聞き、剛は何も言わずにこっちへ歩いてきた。
「偽善者。」
私は剛に言った。自分でいっぱいなのに他人に今食物をあげる行為がどれだけ生命に関わるか、この人はまだわかってないのだろうか。
「いいんだよ。俺なんて。いつ死んでも構わない」
やるせなさそうにうつむいた剛にカズが必死に言う。
「そんなこと言うなよ!ボクの半分あげるからさ。剛も食べてよ!」
カズの一言は剛も生きてよ、と言ってるような気がした。
「いらない。カズが食べなよ」
力なくそう言うと剛は以前足蹴した自販機に向かって歩き出した。
私とカズは顔を見合わせる。
ガコガコと自販機を壊し始め、中からジュースを取り出す。
そして、お金も。
「剛…」
今子供に食物をあげた剛からは想像できない姿だった。あまりにも暴力的でそんな一面があることに私はぞっとする。

