夫婦の活躍により、辺境と呼ばれないがしろにされていたこの地は発展していく。愛されるリナローズの未来もまた、ゲームとは異なる運命を辿るだろう。

 いずれ二人の間には子が宿り、新たな物語を紡ぐ役割を担う。しかしそこに悪役夫妻は存在しない。愛情たっぷりに育てられた攻略対象は、同じだけの愛を周囲に与えるだろう。


 旅立ちの日、辺境に嫁がされるリナローズをロザリーは可哀想と言った。けれどリナローズがこの先も自身を可哀想などと思うことはない。
 それはまさに現在のロザリーを指す境遇なのかもしれない。

 婚約者は自分を見てくれない。遊び歩いてばかりで、ちっとも構ってくれなくなった。
 寂しさから、ロザリーは両親の声にも耳を貸さず浪費を続けた。

 それでもまだ足りない。満たされない。

 優しさから諌めてくれた姉はもういない。ラディアン家を影から支え続けた娘は嫁いでしまったのだらか。

 リナローズが去ったラディアン家は荒れた。ロザリーの浪費と事業の失敗により、財政はひっ迫するばかりだ。
 あれほど嫌い、追い出して清々した姉の支援がなければ家が立ち回らないなど、ロザリーにとっては屈辱的なことだろう。