二重人格者の初恋

「やぁ、ヒカル。この動画を見てくれてありがとう。
本当はヒカルに会って直接、言葉を伝えるべきなんだろうけど、俺は弱い人間だから。
あなたと会ってしまったら、決心が鈍ってしまうと思ったので、こうして動画という手段を取らせてもらいました。

いつもいつも、自分勝手に決めてしまってごめんなさい。


ヒカルのことだから、このメッセージはきっと俺のアトリエか、俺たちが初めて出会った公園の桜の木の下とかで見ているのかな?

当たりでしょ?

俺はヒカルのことが大好きだったから、ヒカルが考えていることは何でも分かるんだ。」

私は、『当たりだよ。やっぱりヒロシは凄いね。』とビデオの中のヒロシに向かって話しかけた。


「正直、今の状況は俺も想定外で驚きでしかない。

昔の俺だったら、他人と交流することなく、一人で好きな絵を描き続けている時の俺だったら、この決断はしていないと思う。

でも、ヒカルと出会えたことで俺は大切な人を、どんな理由であれ奪われる辛さがどれほどのものかを想像できるようになれた。

だから、俺はちゃんと罰を受けようと思う。
それが、残された遺族にとっての唯一の救済だと思うから。


じゃあ、『残された私は?』とかきっとヒカルのことだから思っているんだろうね。それは本当にごめんとしか言いようがない。


小説や映画とかだったら、ここで俺は君に『俺のことは忘れて新しい人と幸せになって欲しい』とか言うんだろうね。

でも俺は忘れて欲しいとは言わない。

良い思い出の1ページとして覚えていてくれると嬉しいな。
で、こんな恋愛を経て、ヒカルには次の恋愛に進んで欲しい。

俺と同じくらいに素敵な男性に出会えることを願っているよ。



最後に元カレとして、画家の先輩として、ヒカルの絵の才能について伝えたいことがあって。
ヒカルはよく自分の絵に自信持てないって言うけど、贔屓目なしで見ても、ヒカルの絵は魅力的な絵だよ。

今の絵に足りないものは、前にも伝えた通り、自分の絵にヒカルが自信を持てるかどうか、たったこれだけ。
自分の絵が世界中のどんな絵よりも綺麗で多くの人たちの心に残る絵だと思えるか。

そして、そういった絵を描きたいっていう思いを持って作品を作っていけるかどうか。

たったこれだけで、ヒカルの絵は大きく変わるから。
俺の絵なんか比べ物にもならないくらいになるから。
そういった想いを通して見える世界は今とは全く違ったものに見えるはず。


ヒカルの絵をいつかまた見られることだけを唯一の楽しみに俺はこれから生きていこうと思う。



だから、だから。。。



あー、やっぱりダメだ。
カッコいいことばっかり言って、映画の悲劇の主人公みたいに別れようと思ってたんだけど。
俺はそんなカッコいい男にはなれないみたいだ。



本当はヒカル、君と別れたくない。


俺が社会に戻ってこれるまでずっと待ってて欲しい。

俺と一緒にいるだけで、君に想像を絶するような苦労をかけることは分かっている。

でも、ワガママを言っていいなら俺は君と死ぬまで一緒にいたいって思っちゃうんだ。


犯罪者の恋人だって後ろ指さされて、噂されると思う。

ヒカル自身の親と縁を切られるかもしれない。

俺とこの先、付き合って行くってことは本当に大きな障害しか用意されていないけど、それでもヒカルが一緒にいたいって思ってくれるのなら、待っていて欲しい。


その時、俺が君を探す手掛かりとして、ずっと絵を描き続けていて欲しい。
描き続けてくれてさえくれれば、必ずどこにいても君のことを探し出してみせるから。


これも俺のワガママ。


だから、ヒカルが俺のことを待てなくなった時は、その時はヒカルはヒカルが信じた道を進んで欲しい。

ヒカルがどんな道を選んだとしても、その道は必ず成功に繋がっていると信じているから、大丈夫だよ。



こんなカッコ悪い彼氏でごめんね。

ワガママでごめんね。

朝まで一緒にいてあげることが出来ない彼氏でごめんね。

笑わせるより泣かせる方が多い彼氏でごめんね。



こんな俺を好きになってくれてありがとう。

俺と出会ってくれてありがとう。

俺たちを受け入れてくれてありがとう。

素敵な思い出をありがとう。

元気でね。

またね。」


「本当に自分勝手な人。」

私は泣きながら笑っていた。