二重人格者の初恋

目が覚めると、一台のスマホが置かれて、『動画を再生しろ!』と書かれたメモを見つけた。
私は、言われた通り動画を再生すると、そこには自分が映っていた。

「やぁもう一人の俺。実際に会話をするのは初めてだな。」

動画はヒロシからだった。私は大きく深呼吸をして動画を再び、再生した。


「聞いたか?俺たちの主だった元人格は、どうやら凶悪犯だったみたいだ。
正直、俺もおそらくお前もそんな記憶は全く残ってはいないだろうが。
ただ、俺は記憶が無いとはいえ、他人からしたら俺たちが二重人格だろうが、三重人格だろうが、記憶があろうが無かろうが、一人の人物にしか見えない。


そして、その人物が『記憶が無いから』『二重人格だから』なんていう理由で、自由気ままに、社会でのうのうと生きていてはいけないと思うんだ。
俺たちは少なくとも、一人の命を奪っているらしい。
残された遺族にとっては恨んでも、憎んでも、それでもなお気持ちが晴れることは無いと思う。自分にとって大切な人を理不尽に奪われたんだから。


昔の俺だったら、正直、こんな風には考えなかったと思う。

でも、ヒカルと出会ったことで、俺はサトシ、君も含め大切な人という存在が沢山、出来た。
その中で、大切な人を奪われる悲しさがどれほど辛いものかを想像することができるようになった。

もし、ヒカルを殺されたら、俺も背中を刺した遺族の方と同じように、ヒカルを殺した犯人を自分の手で殺めようとすると思う。


復讐は悲しみの連鎖しか生まない。
これ以上の復讐を生まない為の方法は、俺たち自身が罪を償うことしか無いと思う。

正直、裁判で『無罪』と言われる可能性もあるかと思う。
それでも、俺はその裁判を受けるべきだと思っている。

だから俺は警察に大人しく捕まりたいと思っている。

お前のワガママに付き合わせて悪いが、一緒に捕まって欲しい。

本当はもっとやりたいことがあったと思う。

俺みたいに可愛い彼女を連れてデートとかもしてみたかったと思う。
でも、その本当はやりたかったことを我慢することが俺たちにできる罪滅ぼしだと思って、諦めて欲しい。


本当はもっと違った話題で、サトシとビデオレターのやりとりをしてみたかったよ。

じゃあ、俺が目を覚ます場所が檻の中であることを信じてるよ、相棒。」


私は、およそ予想通りのビデオレターを停止した。
「すいません。」

私は病室の外で見張りをしている警官を呼んだ。

「刑事さんたちを呼んでいただけませんか?」

こうして、私たちは全く身に覚えがないが、おそらくこの身体がやったのであろう事件で逮捕された。