二重人格者の初恋

「3,000万円かぁ。」
俺は自分の絵にこんな価値があるのか、ずっと疑問に感じていた。

ヒカルに相談してみたら、
『学校の先生が言ってたんだけど、芸術作品っていうのは価値があって無いようなもの。
ある人にとっては1億円の価値を感じても、違う人には1億円払ってでも処分したい無駄なものになったりもする。

だから、自分の作品をお金を出してでも欲しいと言ってくれる人がいたら、喜んで作品を譲るんだって。それが作品にとっても一番良い答えなんだと思うって。』
というアドバイスをくれた。

俺は、ヒカルの作品を多く置けるようにするためアトリエを整理したいと思っていたこともあり、作品を買いたいと言ってくれる人に作品を売る決心をし、一人一人に電話を掛け、作品を売る旨を伝えると全ての人が電話口で喜んでくれていた。


販売した絵を梱包するための材料などを買いに駅前まで足を伸ばしていた。
「平日の昼間だっていうのに、この駅はいつも人が多いなぁ。」

すれ違う人と時折、ぶつかりながら目的の店に向かって歩いていた時、背中に激しい痛みを感じた。

と同時に、大きな声で叫ぶ女性の声が聞こえた。俺は何が起こったのか分からず、痛みを感じる部分に手をやると、生温かい液体に触れた感覚があった。

恐る恐る自分の手を見て見ると、普段の見慣れている色とは異なり、赤褐色に染まった手があった。
『あぁ、俺は今刺されたんだな。』
そんなことを思いながら、意識が薄れていき、その場に倒れ込んだ。


かろうじて意識を取り戻した俺は、救急車に運び込まれている最中だった。
「大丈夫ですか?」
懸命に呼びかけてくれる救急隊員に返事をしようと思うが、声が出なかった。
『俺はこのまま死ぬのかな?』
そしてまた意識を失った。