二重人格者の初恋

翌朝、9:45頃に建物周辺に着いた私は田畑先生へ連絡した。
「もしもし。」
「もしもし、着きましたか?」
「はい。」
「じゃあ、今から迎えに行きますのでお待ちください。」
電話を切ったあと、私はこれから何が起こるのか、本当にヒロシさんは二重人格なのかどうかを確かめられるのか、色々と考えを巡らせていた。

暫くして、遠くの方に田畑先生を見つけた私は一礼した。

「お待たせしました。では、行きましょうか。」
「はい。」
「今日はヒロシくんとは別の人格であるサトシくんが来ていますよ。」

「そうなんですね。ちなみに、どうやって先生は見分けているんですか?」
「服装だったり言葉使いだったりですかね。あと、長年付き合っていると同じ顔のはずなんですが、違って見えてくるんですよ。」

「一卵性の双子を親が見分けられるような感じですか?」
「そうですね。でも、同じ顔が並んでいるよりも見分けることは簡単なような気がします。内面は表情に現れるじゃないですが、本当に違った顔になるんで。」

「もしかしたら私にも分かるかもしれないですね。」

「うーん、どうですかね。正直、ここまで来るのに私は数年掛かっていますからね。そんな簡単には分からないと思います。なので、ヒカルさんには顔ではなく仕草や雰囲気、話し方といった点で判断してもらいたいですかね。」
「分かりました。」

先生はあえて外見での判断は難しいと言ったのだろう。
もし分からなかった時、私がショックを受けないようにとの配慮なんだろうと思った。

「じゃあ、こちらの部屋でお待ちください。暫くしたらサトシくんが検査のために隣の部屋に入って来ますから。なお、こちらからは向こうが見えていますが、向こうからこちらは見えないようになっておりますので。」

そう言うと先生は私を部屋に一人残し、どこかに行ってしまった。私は心臓の鼓動が早くなっているのを感じた。

『私なんで緊張しているんだろう。向こうからこっちが見えているわけでもないのに。』
少しでも緊張をほぐすために何度か大きな深呼吸をした。それでも落ち着かない私は部屋の中をぐるぐると回り始めた。

すると、隣の部屋から話し声がすることに気付いた。

そこにはヒロシさんと同じ顔をしたサトシさんという人物と田畑先生が二人で談笑している様子だった。
そして、一通りの近況報告が完了したのか、田畑先生が質問を始めた。