二重人格者の初恋

「バイトの時間、大丈夫?」
時間は、すでに17:30を回っていた。
「あっ、そろそろ行かないと。」
ヒカルさんは荷物をまとめ始めた。
「また、連絡してもいいかな?」
俺は祈るような思いで質問を投げかけた。

「うーん、気持ちの整理とか色々と考えたいこともあるから、私から連絡するでもいいかな?」
「分かった。連絡待ってるね。」
ヒカルさんはカップに残っていたコーヒーをグイッと飲み干すと、足早にお店をあとにした。もしかしたらヒカルさんとは会えないかもしれないと思っていた俺は、後ろ姿だけでも目に焼き付けておこうと姿が見えなくなるまで目で追い続けた。

「先生、さっきの話なんですけど。」
「あぁ、続きはここじゃあれだから研究室で話そうか。」
「いや、特に俺から聞きたいことはないんで大丈夫です。俺が聞きたいのは、さっきの話をサトシにもするのかどうかってことです。」
「別にサトシから質問されない限りは、私からするつもりは今はないよ。」
「それなら良かった。」

『自分たちのことを誰も知らない』
こんな悲しい現実を知るのは俺一人で十分だと思っていたので、少しホッとした。

そして、『ヒカルさんのことは諦めるしかないだろうな』と冷めきっているコーヒーを飲みながら考えていた。