二重人格者の初恋

昼食後、仕事を片付けながらも頭の片隅には、先生から言われたことがずっと離れずにいた。
「新しい悩み事ですか?」
エリカさんは私の様子を心配して声を掛けてくれた。

「えぇ、まぁ。」
私は気の抜けたような返事をした。
「ヒロシさんの恋愛ですか?」
「まぁ、ヒロシ絡みではありますね。」

「なんだか最近、ヒロシさんに私たちもサトシさんも振り回されてばっかりですね。」
「そうですね。本来であれば、振り回される側も楽しいことなんでしょうけど、私たちの場合は普通じゃないから。」

「確かに、サトシさん達の場合は普通の人なら気にしなくて良いことを考慮しなきゃいけない分、大変ですよね。」
「はい。」

本当だったら、エリカさんとの会話は嬉しいはずなんだが、今日の私は会話自体を楽しめずにいた。

「そうだ、サトシさん!今日って水曜日だからノー残業デーなんです。だから、もしサトシさんの都合がよければ、仕事終わりに私に少し付き合ってもらえませんか?」

「この研究室にノー残業デーなんて存在したんですか?」
「いえ、本当は存在しません。ただ、私はマイルールでなるべく水曜日は早く帰るように決めているんです!リフレッシュも大事な仕事です!」
エリカさんは笑いながら、少し威張っているようなポーズを取った。

「私は毎日、ノー残業デーですから予定は常に空いてます。私でよければエリカさんのリフレッシュにお付き合いさせていただきますよ!」
私はエリカさんの明るい振る舞いが私を励まそうとしているものだと感じ、明るく返事をした。

「よかった!じゃあ、早く仕事終わらせちゃいましょ!サトシさんにこの仕事お願いしても良いですか?絶対に私よりサトシさんの方が早く終わらせられると思うんで!」
「良いですよ!仕事回してください!」

エリカさんは自分の机に大量に積まれていた書類一式を運んで来た。
「じゃあ、よろしくお願いしますね。」
満面の笑みで渡された資料の量に正直、驚きしかなかったが、一点の曇りもない笑顔にやられてしまい、
「分かりました。」
と大量の仕事を引き受けてしまった。