「サトシはなんてバカなことを考えているんだか。でも、そんな風に考えさせてしまったのは俺のせいか。」
俺は日記帳に書かれていた昨日のやりとりとサトシの本音を読んで、涙を流していた。
正直、この先どんな選択肢を取ったとしても、皆んなが幸せでいることは不可能だと感じた。であれば、1日でも早く実行した方が良いのではないかと思った。
俺はスマホの電源を入れるとヒカルさんに電話を掛けた。しかし、ヒカルさんが電話に出ることはなく留守電になった。
「もしもし、ヒロシです。朝早くにすみません。大事な話があるので、この留守電を聞いたら折り返し電話もらいたいです。よろしくお願いします。」
『もう引き返せない。』
俺は覚悟を決めた。
ヒカルさんから折り返しの電話を待っていたが、お昼を過ぎても掛かってくる気配はなかった。家の中でずっと電話を待つだけは辛くなってきた俺は、気分転換を兼ねて散歩に出かけた。
街は満開の桜が少しずつ散り始め、春から夏に向けて季節が動いていた。街ゆく人の服装もコートを脱ぎ、早くも半袖で歩いている人すらいた。
『折角の散歩だから、今日は普段、歩かない道を歩いてみよう』と思い、いつも右に曲がるところを真っ直ぐ進んでみた。
歩いたことのない新しい道はとても新鮮だった。『人はなぜ冒険したくなるのか?』という問いに対しても、今なら的確な回答ができるような気さえしていた。
暫く歩いていると、高台にある公園に出た。そこから見える街の風景は、とても綺麗だった。
『ここから見えるだけでも何万人という人が暮らしていて、それぞれに悩みや葛藤を抱えながら生きているんだよな。』
俺は今感じている感情を忘れないように、スケッチブックに今見えている風景を夢中で描きとめた。
ブーブーブー。
スマホが俺のことを絵画の世界から現実に引き戻した。ディスプレイにはヒカルさんと表示されていた。
「もしもし」
「もしもし、ヒカルです。留守電聞きました。大事な話ってなんですか?」
ヒカルさんの声は、か細く、まるで見えない何かに押しつぶされまいとしようと抗っているように聞こえた。
「はい。単刀直入に言います。俺はヒカルさんが好きです。」
「え?急になんですか?」
電話口で焦っている様子が容易に想像できるくらいにヒカルさんは驚いていた。
「急にすいません。でも、いつか伝えようと思っていて。でもそのいつかが来ないかもしれないと思ったら、伝えられる今日この瞬間に伝えなきゃと思って。」
「随分、自分勝手ですね。」
ヒカルさんは笑っている様子だった。
「よく言われます。お前は自分勝手だって。改めて言います。俺はヒカルさん、あなたが好きです。答えは今じゃなくて大丈夫です。じゃあ。」
俺はヒカルさんからの答えを聞くのが怖くて、電話を一方的に切った。
すると、すぐにヒカルさんから再度、電話が来た。
「もしもし?」
「自分の気持ちだけ伝えて切るとか、どれだけ自分勝手なんですか。」
「すいません。」
「そんな自分勝手じゃモテないですよ。」
「そうだよね。」
「でも、私としてはヒロシさんがモテない方が良いので今のままでいてください。」
「え?それってどういう?」
俺は、ヒカルさんが言いたいことが分からなかった。
「私もヒロシさんが好きってことです。私、ヤキモチ妬きなんでヒロシさんがモテたり、知らない女性と話しているかもしれないって思うと辛くなっちゃうんです。だから、私としては、ヒロシさんがモテない男性でいてくれる方が良いんです。」
「え?俺のこと好きって本当ですか?」
「本当ですよ。じゃなきゃ、初めての食事の日にもう一軒行きましょうとか女性から誘わないですよ。あの時、勇気出して誘ったのに、相手にされなかったから私てっきり脈なしなんだと思ってました。」
「あの時はごめんなさい。」
「謝らないでください。でも、ヒロシさんが私のことを好きだったなんて夢みたいです。」
「それは俺のセリフだよ。こんな嬉しいこと、幸せに感じたことは生まれて初めてだよ。」
「そんな大げさな。まるで初恋が成就したようなリアクションですね。」
ヒカルさんは笑っていた。
まぁ、無理もない。俺は世間から見たら28歳の男性だったら、恋の一つや二つを経験していてもおかしくない年齢なんだから。
「それくらい嬉しいんだよ。じゃあ、再来週のデート楽しみにしているね。」
「うん!また電話しても良い?」
「良いよ。」
電話を切ると、さっきまで悲しい街並みに見えていた景色が華やかで艶やかな街並みに見えた。
俺は日記帳に書かれていた昨日のやりとりとサトシの本音を読んで、涙を流していた。
正直、この先どんな選択肢を取ったとしても、皆んなが幸せでいることは不可能だと感じた。であれば、1日でも早く実行した方が良いのではないかと思った。
俺はスマホの電源を入れるとヒカルさんに電話を掛けた。しかし、ヒカルさんが電話に出ることはなく留守電になった。
「もしもし、ヒロシです。朝早くにすみません。大事な話があるので、この留守電を聞いたら折り返し電話もらいたいです。よろしくお願いします。」
『もう引き返せない。』
俺は覚悟を決めた。
ヒカルさんから折り返しの電話を待っていたが、お昼を過ぎても掛かってくる気配はなかった。家の中でずっと電話を待つだけは辛くなってきた俺は、気分転換を兼ねて散歩に出かけた。
街は満開の桜が少しずつ散り始め、春から夏に向けて季節が動いていた。街ゆく人の服装もコートを脱ぎ、早くも半袖で歩いている人すらいた。
『折角の散歩だから、今日は普段、歩かない道を歩いてみよう』と思い、いつも右に曲がるところを真っ直ぐ進んでみた。
歩いたことのない新しい道はとても新鮮だった。『人はなぜ冒険したくなるのか?』という問いに対しても、今なら的確な回答ができるような気さえしていた。
暫く歩いていると、高台にある公園に出た。そこから見える街の風景は、とても綺麗だった。
『ここから見えるだけでも何万人という人が暮らしていて、それぞれに悩みや葛藤を抱えながら生きているんだよな。』
俺は今感じている感情を忘れないように、スケッチブックに今見えている風景を夢中で描きとめた。
ブーブーブー。
スマホが俺のことを絵画の世界から現実に引き戻した。ディスプレイにはヒカルさんと表示されていた。
「もしもし」
「もしもし、ヒカルです。留守電聞きました。大事な話ってなんですか?」
ヒカルさんの声は、か細く、まるで見えない何かに押しつぶされまいとしようと抗っているように聞こえた。
「はい。単刀直入に言います。俺はヒカルさんが好きです。」
「え?急になんですか?」
電話口で焦っている様子が容易に想像できるくらいにヒカルさんは驚いていた。
「急にすいません。でも、いつか伝えようと思っていて。でもそのいつかが来ないかもしれないと思ったら、伝えられる今日この瞬間に伝えなきゃと思って。」
「随分、自分勝手ですね。」
ヒカルさんは笑っている様子だった。
「よく言われます。お前は自分勝手だって。改めて言います。俺はヒカルさん、あなたが好きです。答えは今じゃなくて大丈夫です。じゃあ。」
俺はヒカルさんからの答えを聞くのが怖くて、電話を一方的に切った。
すると、すぐにヒカルさんから再度、電話が来た。
「もしもし?」
「自分の気持ちだけ伝えて切るとか、どれだけ自分勝手なんですか。」
「すいません。」
「そんな自分勝手じゃモテないですよ。」
「そうだよね。」
「でも、私としてはヒロシさんがモテない方が良いので今のままでいてください。」
「え?それってどういう?」
俺は、ヒカルさんが言いたいことが分からなかった。
「私もヒロシさんが好きってことです。私、ヤキモチ妬きなんでヒロシさんがモテたり、知らない女性と話しているかもしれないって思うと辛くなっちゃうんです。だから、私としては、ヒロシさんがモテない男性でいてくれる方が良いんです。」
「え?俺のこと好きって本当ですか?」
「本当ですよ。じゃなきゃ、初めての食事の日にもう一軒行きましょうとか女性から誘わないですよ。あの時、勇気出して誘ったのに、相手にされなかったから私てっきり脈なしなんだと思ってました。」
「あの時はごめんなさい。」
「謝らないでください。でも、ヒロシさんが私のことを好きだったなんて夢みたいです。」
「それは俺のセリフだよ。こんな嬉しいこと、幸せに感じたことは生まれて初めてだよ。」
「そんな大げさな。まるで初恋が成就したようなリアクションですね。」
ヒカルさんは笑っていた。
まぁ、無理もない。俺は世間から見たら28歳の男性だったら、恋の一つや二つを経験していてもおかしくない年齢なんだから。
「それくらい嬉しいんだよ。じゃあ、再来週のデート楽しみにしているね。」
「うん!また電話しても良い?」
「良いよ。」
電話を切ると、さっきまで悲しい街並みに見えていた景色が華やかで艶やかな街並みに見えた。


