「サトシは他人の為に自分を犠牲にすることを第一に考えるよね。それは決して悪いことではないし、素晴らしいことだと思う。誰かの為に自分の損得を抜きにして考え、行動できる人が増えれば社会は間違いなく皆んなが気持ちよく生きることができるものになるから。
でも、私としてはサトシ自身も幸せになって欲しいと思っている。私からしたら、サトシもヒロシもどちらも等しく大事な患者だから。
君たちのどちらかの人格を消すということは、私にとっては『人を殺す』ことと同じなんだ。
おそらく、法律上では、君たちどちらかの人格を消し去ったとしても私が殺人罪に問われることはないだろう。
でも、私の中では殺人なんだよ。
だから、二度とさっきのような事は考えないしお願いしないと約束して欲しい。これはヒロシにもサトシから伝えておいて欲しい。」
先生は、とても悲しそうな表情をしていた。
その表情を見た私は、『自分はなんて愚かなことを考えてしまったのだろう』と思った。
「分かりました。先生の今の言葉をヒロシにも伝えておきます。でも。それでも、もしもの時は。」
私は、この先を言うべきではないと頭では分かっていた。分かっていたが、どうしても聞いておきたかったことを言葉にした。
「先生、もしもの時は、さっきのようなワガママを聞いてくれますか?」
先生は目をぎゅっとつむり、一度天を仰いだ。
数秒後ゆっくりと目を開き、私の目を見つめながら、
「その時にまた、ゆっくりと時間を取って話そう。」
とだけ回答し、結論を出してはくれなかった。
検査が終わり、お昼ご飯を学食で食べていると、エリカさんが目の前に座り、
「今日の検査で何かありました?」
と心配そうに質問してきた。
「なんでですか?」
「いえ、検査から帰って来た後の先生が辛そうな表情をしていたので。検査で何か悪い数字でも出ちゃったのかと思って。」
「あー、検査自体は多分、いつもと変わらない数値だと思います。ただ私がちょっと、変なことを質問しちゃったので、そのせいだと思います。」
「田畑先生をあそこまで辛そうにさせるって一体、どんな質問したんですか?」
私はここで嘘をついても仕方ないと思い、本当のことを話すことにした。
「もし、私たちのどちらか一方の人格を消して欲しいとお願いしたら、消してくれるか?って質問したんです。」
「そしたら?」
「そうしたら、『先生にとっては私たちのどちらの一方の人格を消すことは殺人と等しい行為なんだ』と。『だから、そんな辛いことをお願いしたいと二度と言わないで欲しい』って言われました。」
「なんてこと言うんですか!」
エリカさんは突然立ち上がり大声で私を怒鳴った。あまりにも大きな声だったため、学食にいた他の学生は『何があった?』といった顔で私たちを見て来た。
「エリカさん、落ち着いてください。」
私は慌ててエリカさんに座るように促した。
「落ち着いてなんていられないですよ。サトシさん、それがどれほどヒドいお願いか分かってますか?」
エリカさんはイライラしているようにも、悲しそうにも見えた。
「はい、先生と先ほど話している中で感じました。」
「今、分かっているならいいです。私は先生の助手ですが、もしサトシさんが同じお願いをして、先生が渋々、そのお願いを聞き入れたとしても私が全力でそんな馬鹿げた事はさせませんから。」
「ありがとうございます。とりあえずヒロシにも先生やエリカさんが、こんなにも私たちのことを考えてくれていることを伝えます。」
「お願いします。もしサトシさんが消えちゃったら、少なくても私は悲しいですから。それだけは覚えておいてくださいね。」
「はい、エリカさんを悲しませるようなことはしないと誓います。」
家に帰ったあと、私は日記帳に今日、先生やエリカさんと話した内容を事細かに記載した。そして、日記の最後に私の思いを書き足しておいた。
『これでよし。』
私は日記帳を閉じた。
でも、私としてはサトシ自身も幸せになって欲しいと思っている。私からしたら、サトシもヒロシもどちらも等しく大事な患者だから。
君たちのどちらかの人格を消すということは、私にとっては『人を殺す』ことと同じなんだ。
おそらく、法律上では、君たちどちらかの人格を消し去ったとしても私が殺人罪に問われることはないだろう。
でも、私の中では殺人なんだよ。
だから、二度とさっきのような事は考えないしお願いしないと約束して欲しい。これはヒロシにもサトシから伝えておいて欲しい。」
先生は、とても悲しそうな表情をしていた。
その表情を見た私は、『自分はなんて愚かなことを考えてしまったのだろう』と思った。
「分かりました。先生の今の言葉をヒロシにも伝えておきます。でも。それでも、もしもの時は。」
私は、この先を言うべきではないと頭では分かっていた。分かっていたが、どうしても聞いておきたかったことを言葉にした。
「先生、もしもの時は、さっきのようなワガママを聞いてくれますか?」
先生は目をぎゅっとつむり、一度天を仰いだ。
数秒後ゆっくりと目を開き、私の目を見つめながら、
「その時にまた、ゆっくりと時間を取って話そう。」
とだけ回答し、結論を出してはくれなかった。
検査が終わり、お昼ご飯を学食で食べていると、エリカさんが目の前に座り、
「今日の検査で何かありました?」
と心配そうに質問してきた。
「なんでですか?」
「いえ、検査から帰って来た後の先生が辛そうな表情をしていたので。検査で何か悪い数字でも出ちゃったのかと思って。」
「あー、検査自体は多分、いつもと変わらない数値だと思います。ただ私がちょっと、変なことを質問しちゃったので、そのせいだと思います。」
「田畑先生をあそこまで辛そうにさせるって一体、どんな質問したんですか?」
私はここで嘘をついても仕方ないと思い、本当のことを話すことにした。
「もし、私たちのどちらか一方の人格を消して欲しいとお願いしたら、消してくれるか?って質問したんです。」
「そしたら?」
「そうしたら、『先生にとっては私たちのどちらの一方の人格を消すことは殺人と等しい行為なんだ』と。『だから、そんな辛いことをお願いしたいと二度と言わないで欲しい』って言われました。」
「なんてこと言うんですか!」
エリカさんは突然立ち上がり大声で私を怒鳴った。あまりにも大きな声だったため、学食にいた他の学生は『何があった?』といった顔で私たちを見て来た。
「エリカさん、落ち着いてください。」
私は慌ててエリカさんに座るように促した。
「落ち着いてなんていられないですよ。サトシさん、それがどれほどヒドいお願いか分かってますか?」
エリカさんはイライラしているようにも、悲しそうにも見えた。
「はい、先生と先ほど話している中で感じました。」
「今、分かっているならいいです。私は先生の助手ですが、もしサトシさんが同じお願いをして、先生が渋々、そのお願いを聞き入れたとしても私が全力でそんな馬鹿げた事はさせませんから。」
「ありがとうございます。とりあえずヒロシにも先生やエリカさんが、こんなにも私たちのことを考えてくれていることを伝えます。」
「お願いします。もしサトシさんが消えちゃったら、少なくても私は悲しいですから。それだけは覚えておいてくださいね。」
「はい、エリカさんを悲しませるようなことはしないと誓います。」
家に帰ったあと、私は日記帳に今日、先生やエリカさんと話した内容を事細かに記載した。そして、日記の最後に私の思いを書き足しておいた。
『これでよし。』
私は日記帳を閉じた。


