深月明子はティアラこそ載せていないものの、そこそこお金持ちのお嬢さまだ。そんな彼女は、えらそうに言った。
「王子さまを探してやることは、ひとつしかないよ」
「サインでも貰う?ツキ、王子さまのファンだもんね」
「え、ちがうんだけど」
間髪入れずに、冷静なテンションで怒られた。いや、ちょっとふざけただけじゃんか。
俺がくちびるを尖らせて拗ねて見せると、彼女は目を細めてにらんできた。はいはい、すみませんね。そして、堂々と正解が発表された。
「王子さまに、結婚を申し込まれるの」
「けっこん?」
「そうだよ、わたしのことはプリンセス・メイって呼んでね」
うん?この子は、さっきから何を言ってるんだ?ぱちりとウインクを決めるツキは、プリンセスっていうよりアイドルみたいでかわいい。だけど、ちょっとかわいいからって、プリンセス・メイなんてそんなの呼ぶわけないだろ。
まずはオマエが、俺のことを〝王子さま〟って呼んでみろよ。
声には出さず、こころの中で言い返す。
そうしたら、俺のほうから直々に、結婚くらい、申し込んであげてもいいのにな。



