「もう、夜になっちゃうね」
まだ夕方の時刻なのに、もうすっかり日が落ちてしまった窓の外を見て、彼がつぶやく。わたしはそれに頷いて、もうひとつ情報を追加した。
「きょう、ふたご座流星群だよ」
「いっしょに観ようって、誘おうと思ってた」
「じゃあ、はやく誘って」
「あーもう、お姫さまだなあ」
わがままだなあ、とか。うるさいなあ、とか。そういう毒を、ホシくんはあまり言葉に出さない。
お姫さまだなあ、なんて、やさしさで包んで、まるい音にしてくれる。
「となりでいっしょに、流れ星にお願いごとをしませんか?」
王子さまが、わたしの手の甲に口づけを落とす。
その仕草は、くらっと目眩がするほど糖度が高くて、ちょっとだけ泣きそうになった。
男女の幼なじみがぜったい結ばれるっていうシステムは無いとおもうけど、わたしたちは結ばれる。
これはね、幼なじみだから、じゃない。
わたしたちだから、だ。
世界があまりにも優しいので、わたしはすべての愛に感謝しようとおもう。
そして、流れ星には、愛を持ったすべての人の幸福を、心から願いたいとおもった。
———なんてね。
いまの、プリンセスっぽいでしょ?