わたしの声で振り返ったホシくんは、マイクも忘れて。
『「っ、ツキ?!?!」』
と、驚いた様子で大きな声をだした。きぃーん。ハウリングが超うるさい。
『「え、あ、なんで、」』
機械に囲まれた椅子に座ったまま、口をぱくぱくとさせているホシくん。
さっきまで放送で聞いていた、かっこいい声とは大違いで笑ってしまう。
でも、どっちのホシくんも好きだ。
どんなホシくんも、わたしの王子さまだ。
「そりゃあ、来るでしょ」
『「そ、そっか、」』
「とりあえずマイク切ってよ、話しにくい」
『「うん、えっと、みなさま、今夜は星を見上げましょうね、では」』
そう言って、ぷつりとマイクを切る。
ぴんぽんぱんぽーん。下りの音楽を忘れずに鳴らす。このひと、放送室を楽しんでやがる。
「わたしの王子さまになりたかったんだ?」
放送機材の電源を落としたホシくんが再び振り返ったので、わたしは挑発的に訊いた。
すると、予想していたよりもあっさりと認めた彼は、「そうだよ、だめ?」と首を傾げる。
それがかわいかったので、わたしはお手上げだった。けっきょく、かわいいを前にすれば人類みな無力だ。
ホシくんのような完璧人間に、こういう隙を見せられると、あっけなく降参するしかない。



