星屑も、月に尖る


はじめてツキを見たときのことを思い出す。



彼女のご両親は化粧品会社の偉い人なのだけど、すっごく美人さんだ。化粧品関係の人って、あんなふうに綺麗じゃないといけないのだろうか。

とくに、ツキのお父さんを見たときは、こんなにうつくしいひとがこの世にいるのか、とびっくりした。


その血を存分に受け継いだツキは、容姿だけでいうと、お人形のようにかわいい。美人さんだとおもう。

まあ、これは、飼い主が飼い猫にたいして「うちの子ってほんと美人さん」って言っちゃう感覚と近いから、あれだけど。



でも、ほんとに、遠くから見たあの瞬間、あ、かわいい、と思った。

ひとりだけ、輝きがちがう。妖精の粉みたいなキラキラを纏っていて、かわいい以外の言葉が出てこない。


同じ歳で同じ幼稚園に通っているので、よくいっしょに遊ぶようになった。

そのあたりから、ちょっとへんな子、とは思い始めたけど、やっぱり〝かわいい〟が勝ってしまう。

ツキは、かわいい。かわいいから許しちゃうし、かわいいから甘やかしちゃう。


そういえば、ツキは親しい友人や家族から、メイと呼ばれている。そして俺も、小学生のあたりまではメイと呼んでいたし、俺のほうはチカと呼ばれていた。


でも、途中で、彼女が「わたしたち、月と星だね」と気づく。

その関係性が、なんだかスペシャルに思えて、俺たちは〝ツキ〟〝ホシくん〟と呼びあうようになった。


俺たち共有の趣味のひとつとして、星にはちょっと詳しい。

俺の部屋の天井には、暗くすると発光するタイプの惑星のシールが貼られている。俺は、宇宙で眠っている。

同様に、ツキの部屋の天井は、三日月が大きくあって、正しい位置に星座が作られている。彼女は、プラネタリウムで眠っている。