「暗殺?だれかに狙われたいの?」
「どうせ死ぬなら、ドラマチックがいいでしょ」
ふふん、と鼻を鳴らして自慢げなツキ。見習いプリンセスの機嫌を治すグランプリがあったら、俺は優勝できる自信がある。
見習いプリンセス。これは、ツキがじぶんを揶揄するときの表現だ。
彼女はまだ見習いみたいだけど、いつかきっと、プリンセスになる器だと確信している。ほら、かわいいし。
気分屋だし、面倒だし、手がかかるし、わがままだけど。マイルールが無駄に多いし、地に足ついてないし、フィクションで生きてるし、空想癖だけど。
でも、かわいくてしょうがないので、つい甘やかしてしまう。同じ歳の友人というより、〝幼なじみ〟という特別枠。
俺にとって、深月明子は、とくべつなただひとりだ。
「暗殺ってドラマチックかな」
かるく撫でる程度の反論を投げる。ツキ特有の思考回路がとても好きな俺が、それを本気で否定することは絶対にない。
「こっそり殺したいほど想われてるのって、魅力ない?」
「手段は?」
「毒りんご」
「白雪姫は呪いにかけられて目を覚さないだけだよ、死んでるわけじゃない」
「じゃあ、どうやって暗殺されるか考えとく」
深く考えずてきとうに答えるツキは、とりあえず、恋の病で自滅することなさそうだ。年中無休で王子さまを夢見てるくせに、彼女は恋愛至上主義ってわけでもない。



