さっきまで別の女の子が座っていた場所に入れ替わりで来たので、なんだか、浮気相手を帰して本命を呼んだ悪い男みたいな気持ちにならないこともない。
まあね、実情はまったく違うけど。
なんて思いながら、とりあえずツキの言い分を聞いてあげるために目を合わせると。
「さっきまで、ここ、かわいい女の子すわってた!」
マジで、浮気現場を押さえた本命女みたいなことを言ってきた。勘弁してほしい。
だがしかし、ここで同じ熱量を持ってはいけない。
この面倒な幼なじみとやっていくには、常に気持ちをフラットにすることが重要なので、俺は会話を成立させることにした。
「近くで見てたの?来たらよかったじゃん」
「吉原くんが、わたしのせいでホシくん元気ないかもって言うから、励まそうとして様子を見に来たの!」
「なるほど」
「そうしたら、他の女の子を侍らせて楽しそうにお喋りですか!ごきげん麗しゅうございますね!」
ツキが激昂している理由がよくわからず、俺は「恋の病について教えてもらった」と会話の内容を伝えた。



