星屑も、月に尖る


俺がこほんと咳払いをしたのを合図に、女の子は次の話を展開する。



「そうしたら、自分がこんなにも苦しめられているのだから、相手にも同じ気持ちになってほしいと感じてきます」

「ほう」

「勝手に好きでいる、では足りなくなってくるわけですね」



的確にポイントをまとめて話すこの子は、きっと、地頭がいい。こんなに賢い子でも、恋の病に侵されちゃうのか。

ちょっと、怖すぎないか?恋の病。



「そんなにしんどいなら、恋なんてやめちゃえば?」

「楽しいこともあるんですよ」

「ふうん、わかんない」

「恋したら、わかるんじゃないですか?」



考えてみれば。
古典の授業で出てきた昔の人たちも、どうしようもない恋の病によって、ミスを犯してしまったひとばっかりではないか。


えー、恋の病って怖すぎる。俺はぜったいに、患いたくない。病はみんなそうだけど、これはとくに。



「それが我慢できなくなったとき、好きな人にとっての〝たったひとり〟に選ばれないと不安になってしまって、付き合ってくださいって言うんです」



付き合ってください。

なんたって王子なので言われたことはあるものの、俺のほうから言ったことはないし、言いたいと感じたことすらなかった。



「あるいは、せめて、こんなに好きなのを知っていてほしいっていうエゴで、記念に告白だけしちゃうとか」



え、そういうこと?!告白してくれるのって、ただ言いたいだけなの?!俺って、いつもそれに付き合わされてるわけ?!

あのね!断るとき、けっこうカロリー消費するんだけど!
記念に告(い)ってるだけなら、それ先におしえてよ!無駄に気ぃ遣っちゃうじゃんかよ!