俺は、じぶんの悩みを解決しようとしただけだ。
「誰かを特別に好きになるのって、どんなかんじなのか教えてもらいたかったんだよね」
恥ずかしく思いながら、ほんとうのことを告げた。
それにたいして、彼女はこくこくと頷く。
「そういうこと、でしたか」
「うん、まだ、恋とかしたことなくて、」
「えええ、もったいないです!」
そして、告白面接の20倍はきはきした喋り方になった。どうやら、ふわふわかわいい、を演じていたらしい。俺の好みは見透かされているようだ。
完全に顔つきの変わった彼女が、「ここ、座ってもいいですか?」と許可をとる。
どうぞと促せば、彼女は素早く同じテーブルの席に着いて。
「恋というものはですね、」
なんだか、熱血教師みたいに変身した。
星野先輩のことが好きだと言った舌の根も乾かぬうちに、その女の子は俺に恋の指導をはじめた。
「恋したら、無意味にその人のことばっかり考えて、勝手にしんどくなったりしますよ」
「しんどいの?」
「しんどいです、恋の病とはよく言ったものです」
ふむ、ちょっと考え込む。
ツキは、空想の王子さまのことばっかり考えているので、ある種で恋の病かもしれない。
そうなると、なんだか、顔のない王子さまに対して腹が立ってくる。
ていうか!だれだよ!その王子さまって!
王子は俺だろ!!!!!!!!
ああ、いけない。ツキのことを考えると、きょうは特に取り乱しがちだ。



