「ホシチカ〜」


そのくせ、たまにシュガーレスどころかスパイシーなので、もう、男子高校生のHPはずたぼろである。まじで、王子なんかやってる場合じゃない。

 

「ほしのーちかいー」


いや、王子なんかやってる場合だ。深月明子を恋愛対象にできる奇特で希少な王子さまを見つけ出すよりも、俺が王子さまやってるほうがずっとコストパフォーマンスがよろしいわけで。

だから。だまって俺にしとけよ、ばかツキ。


「ほしのくーん?もしもーし?」

 
プライドって、ガラスみたいに粉々に砕けると思っていたけど、ちがうらしい。なんていうか、ガムみたいにぺちゃくちゃ噛まれて、味がしなくなったら、ぺって捨てられた気分に近い。それって、どんな気分だ。


「おーい?王子?」  

「っ、吉原!」

「だいじょうぶ?」

「あ、えっと、ごめん」


眉根を寄せてる表情からして、おそらく何度も名前を呼んでくれたのだろう。気づかなかったので、あわてて謝った。


「ホシチカ、おまえ、いよいよ王子って呼ばれないと反応できないからだになってしまったのか」


友人の吉原は、バスケットボールを指先でくるくるくるくると永遠に回し続けながら、使っていないほうの手であたまを抱えている。そんなに絶望しなくても、いいとおもう。