「さすが、王子さまだよね!」
さすが。これは、俺がいちばん高まるフレーズかもしれない。
〝流石〟の意味は、〝評判や期待のとおりの事実を確認し、改めて感心するさま〟だ。数々の褒め言葉を頂戴している俺だけど、こればっかりは一朝一夕で得られるものではない。
過去の俺が、現在の〝さすが〟をつくっているわけだ。
「王子さまのせいで、恋愛のハードル上がっちゃうんだけど」
「王子さまレベルはいないから、やめなって」
「きゃはは、たしかに!」
これは、体育のバスケで長距離シュートを決めた俺に向けられた、観客の女の子たちの言葉だ。
正直にいうと、シュートが決まったことよりも、注目と賛辞を浴びるのがきもちよかった。なんていうか、この世界の主人公ってかんじがした。あの快感は、くせになる。
注目のシャワーで髪を洗いたい。うん、何言ってるんだろ。俺。
きょうの俺は、どうにもおかしい。自尊心を保つのに、ちょっと、むりしているような気がする。
それも、そのはず。
「幼なじみの男女って、自動的に結婚しなきゃいけないシステムじゃないの?」
「そんなシステムないです」
「え?じゃあ、俺、ツキ以外と結婚するの?」
「それは自由だよ、わたしたちって王国背負ってるわけじゃないし」
こちらが、俺のガラス色の自尊心をぶん殴った会話の再放送である。しかも、ちょっとこちらを小馬鹿にした、薄っぺらい微笑みというオプション付き。
もちろんお相手は、あまったるい思考回路でおなじみの幼なじみである。