俺の人生はイージーモード。
目を瞑ってでもクリアできちゃう、ぬるゲー仕様だ。


じぶんの立ち位置は、いちばん輝く星のもとにあると思っている。

それこそ、星野誓(ほしのちかい)という名前に負けないくらいには。


だって、かっこいいもん。俺。勉強もできるし、スポーツは超得意だし、親はお金持ちだし。あと、けっこう人気者だったりもするし。

俺でレーダーチャートを作ったら、全項目で満点がとれると思う。激レアのオールマイティカード。


もう、星に近いっていうより、星そのもの。俺って、そういう人間なわけ。

 
たとえば、ほら、ぼんやりと、窓側のじぶんの席に座っていれば。

「王子さまが空を見てるね」

「うわあ、絵になるね」

「やっぱり王子がイチバンだわ」



勝手に女の子たちが囁きだしてくれる。ほんとうは、空なんて見ていない。窓硝子に映ったじぶんにうっかり見惚れていただけだ。

じぶん大好きなのが周囲にばれていなかったので、ひとり安堵したのはここだけの秘密にして。

そんな、眠気の残る朝の教室で、イレギュラーは起こった。