「…。」

『あの、先輩?』

「…。」

『…蒼生先輩?』

「…あとちょっと。」

『…呼ばないとダメですか?』

「うん、なんか距離あるみたい。」

『……あ、おい…君。』

「君は余計。でもまぁいっか。どうしたの?」

私が名前を呼ぶと先輩は嬉しそうに笑った。


私は先輩が近くにいるだけで大変なのに、そんなことされたら心臓が持たない。

顔に熱が集まってくる。

「じゃあ、さっきのとこやろ。」

『はい、せんぱ……。』

「じゃなくて?」

『蒼生、くん…。』

「ん。」

先輩が教え始めた時、先輩の服から嗅いだことのある香りが漂ってきた。

『…あの、蒼生、、くん。』

「ん?どうした?」

先輩がノートに図を書きながら答える。

『入学式の日に私を助けてくれたのって先輩、ですか?』

「入学式…?あぁ、そうだよ。あの後、体調どうだった?」

先輩は思い出したように言った。

『大丈夫でした。あの時、助けてくれて本当にありがとうございました!』

「いや、お礼される事なんて何もしてないよ?」

『いや、お礼してもしきれないですよ。本当はすぐにお礼をしたかったんですけど、あの時は誰が助けてくれたのか分からなくて…。』

「大丈夫だよ。俺は乃蒼ちゃんが元気に学校にきてくれてるだけで嬉しいからさ。」

ほんとに先輩は優しいなぁ。

「……乃蒼ちゃん、その足首のやつって…」